魔殺武具』・・・人の持てる武具の中でも、人為的な法術を込められた『魔を退ける』武具ではなく自然に身につきし力で『魔を殺す』事に特化させた、武器・・・

                    (魔術教会著、『呪術辞書』より魔殺武具の項目から)


今現在、魔殺武具の数は極めて少ない。

その最大の要因は魔殺武具を生み出す鉱石、通称『魔殺鉱』の採掘場が確認されているだけで、東欧州ポーランド・南米アルゼンチン、そして日本のみにしか無いと言う事であろう。

過去ポーランドは仏・独・露を始めとする列強諸国に幾度となく、国土分割の憂き目を見たが、その真の理由は、この地にしか『魔殺鉱』を採掘できなかったこの一点のみである。

現に我が教会内でも保有されている魔殺武具は、わずか数点に留まりしかもそれら保存状態は極めて悪い。

(伝説ではかのイエス・キリストの腹部を貫いた『ロンギヌスの槍』は魔殺武具であった説もある事をここに付属しておく。しかしロンギヌスは失われてしまっている)

保存状態が劣悪の理由としては、『魔殺鉱』自体の硬度が鉄よりも脆く、また鉱石の有する魔力を使い果たしてしまうと、その鉱石が『死に絶える』為、使い捨ての道具として扱われた事が最大の要因であろう。

また、魔殺武具はその特殊能力の割には教会を始めとする、退魔組織からは評価は低い。

その要因は、事実上魔殺武具は使い捨てられた事、そしてその特殊能力は教会・騎士団の保有する概念武装と比べても貧弱である事が挙げられる。(銃火器の様に保有する魔力を発射する武具も存在するようだが、威力は微々たる物で、第一から最高位第七聖典の足元にも及ばない)

それゆえ、『魔殺武具は従であって主でない』、これこそが従来の魔殺武具の常識であり、あくまでも最後の切り札としての評価が高いだけであった。

しかし、最近になり我々のその評価を完全に覆す『魔殺武具』が突如として歴史の表舞台に姿を現した。

極東日本において死徒二十七祖第十位ネロ・カオス、それに準ずる扱いを受けていた『アカシアの蛇』、ミハイル・ロア・バルダムヨォン、我々埋葬機関をもってしても封印不可能とされた二人の死徒を滅ぼした伝説の『直死の魔眼』を保有すると言われる"殺人貴"が『マガタチ』・『マガナギ』と呼ばれる、魔殺武具を保有していると言う情報が第七位代行者『弓』より届けられた。

詳しい詳細は未だ不明であるが『弓』からの情報を信じるのならば、その二本の魔殺武具は聖典に匹敵する威力の魔力を放出が可能であり、更に武器としても最高水準に達していると言う事だ。

(しかし、『弓』は最小限の情報提出しか応じておらず、"殺人貴"に篭絡されていると言う評判もある為公正な第三者の視線が必要と思われる)

さらに近年"殺人貴"が、かの真祖アルクェイド・ブリュンスタットと短時間であれば対等に渡り合える戦闘能力を保有している事も確認されており、その身体能力・『マガタチ』・『マガナギ』と呼ばれる『魔殺武具』・更に『直死の魔眼』の保有者、全てにおいて、"殺人貴"の存在がもはや無視出来ぬレベルに達しており、教会としては"殺人貴"の洗脳処理を行い、代行者とする事により"殺人貴"の教会への影響の懸念を皆無とする事が急務であると結論つけざるを得ない。

(追記、先日入った最新情報では、"殺人貴"が存在すら不明であった第十三位『ワラキアの夜』をも葬り去った事も確認されており、その際に教会、魔術教会、双方より指名手配を受けていたアトラス院の錬金術師、シオン・エルトラム・アトラシアもまた"殺人貴"が例の『魔殺武具』を保有している事を確認している。我等としては、前記述の他に"殺人貴"の封印指定、最終的には断罪の執行、しかる後に『魔殺武具』の回収をも視野に入れなければならない事も追記しておく)

             (埋葬機関内極秘文書『魔殺武具』と"殺人貴"の処遇から)


『魔殺武具』、『マガタチ』・『マガナギ』・・・

この二本の『魔殺武具』は現在"殺人貴"の手中にある。

本来評価の低い筈の『魔殺武具』としては最高位の武器性能を誇り、それを実際に目にしたブルーの話だと、外観すらも完成の域に達していると言う事である。

また特筆すべき事として、通常の『魔殺武具』では放出不可能である筈の魔力の放出をも可能としていると言う点であろう。

更にブルーが"殺人貴"から直接入手した情報では、その魔力の放出に関しては、魔術の様に呪文の詠唱ではなく、持ち主の頭の中においてのイメージ通り、自由に具現化されると言う驚くべき事実が確認されている。

以下はその能力名である。





      『ファイア』・『発火』(『マガタチ』・『マガナギ』)

イメージとしては燃焼、爆発。

(この能力は"殺人貴"の話だとこの二本の基本能力であると言う)




『降臨』(『マガナギ』)

天から地に落ちる雷を思い浮かべる。




『マシンガン』(『マガタチ』)

機関銃の乱射をイメージする。

(威力は弱いが、広範囲のカバーには適している)




『五月雨』(『マガナギ』)

弱く降り続ける、雨をイメージする(ロンドンの煙る様な霧雨を思い浮かべればよいであろう)。

また、この能力の特徴としては攻撃よりも敵の追跡に適している。




『ヘビーランス』(『マガタチ』)

中世の騎士の所有していた投擲槍を思い浮かべれば良い。




『暴風』(『マガナギ』)

その名の通り、荒れ狂う風をイメージする。

(『マガナギ』版『マシンガン』とでも言えば良いであろう。ただし、一撃一撃の破壊力は『暴風』の方が上である)




『ニードル』(『マガタチ』)

巨大な剣山、もしくは針の山を思い浮かべれば最適であろう。

(ただし、この能力に関しては、直接地面、若しくは天井、壁に『マガタチ』を突き付けないと使用は不可能である)




『散降臨』(『マガナギ』)

積乱雲内の荒れ狂う雷を思い浮かべる。




『メテオ』・『竜帝咆哮』(『マガタチ』・『マガナギ』)

この二つが、それぞれの『魔殺武具』最強の発射系統の具現化能力とされる。

『メテオ』は、隕石群の墜落を、『竜帝咆哮』は竜の天翔ける様を思い浮かべると言う。

(信じがたい事だが、東洋では竜は神として崇められている)




そして、突撃する能力もあり、それが

『飛竜』(『マガタチ』・『マガナギ』)である。

イメージとしては、竜の飛翔を思い浮かべると言う、

更に『飛竜』は水平に突撃するタイプと、地上から上空に飛翔する『昇竜』、逆に上空から地上に急降下する『降竜』、この三タイプに分けられる。





以上が現在までで判明している『マガタチ』・『マガナギ』の能力である。

以上の点から、『マガタチ』・『マガナギ』、この二本の『魔殺武具』は我等魔術教会としても到底無視できる物ではなく、教会に先んじて一刻も早い回収、及びその研究が急務であると考えられる。

(追記、尚この件に関して"殺人貴"への協力要請を協会内で唯一面識のあるブルーに依頼した所「私がし・・・じゃなくて"殺人貴"から得られたのは、二本の『魔殺武具』の能力情報のみよ。それに彼に関しては私達は無暗に手を出さない方が賢明よ」と、断られた事も追記する。また穴蔵の錬金術師で一人"殺人貴"との接触を成功した者がいるとの未確認情報も存在しており、確認が急がれている)

         (魔術協会内部報告書『魔殺武具、マガタチ・マガナギに関する調査報告書』から)





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